西暦5000年の未来(中国群雄割拠編1)【ストーリー原案】

西暦2000年代の現在から3千年後の未来。

西暦5000年には、文明は衰退しその中心は中国に移っていた。

 

統一的な中央政府はなく、各地で軍閥が群雄割拠している。火器は存在するものの、戦車や戦闘機が活躍する訳ではなく、戦争は専ら簡易な構造の銃火器と刀剣、馬を持って行われている。

 

そこに、軍閥を率いる一人の将軍がいた。名前は馬勇。

雄弁の才を持ち、よくものごとをおさめたので地域の人々から推され集団を率いるようになった。モスグリーンの軍服に栗毛の馬を駆って勇猛に闘い、勢力圏は秩序が保たれ善政が敷かれたので。馬将軍の勢力は徐々に拡大を続けた。

 

馬将軍が三十代の半ばも過ぎた頃、新たに勢力圏に入った里々で、美貌の少女の噂を耳にするようになった。

何でも少女は、雪のように白い肌と、みるものをうっとりとさせてしまうような美しい眼差しを持つらしい。

馬将軍は、噂の少女の居場所を突き止めるべく、栗毛の愛馬を駆って里々を駆け巡った。

 

それらしい里を突き止めたものの、美しい娘をまもろうと、里のもの総出で知らぬぞんざぬと通すので中々少女をみつけることができない。馬将軍は一計を案じ、月明かりの夜に竹笛を奏でながら里をまわることにした。年頃の娘なら旋律をききたいと窓辺や戸をそっと開けて音楽をもっと聴きたい、その主をみてみたいと思うはずだ。

 

狙い通り、娘を隠しているのではないかと思われた家の裏の窓辺が少し開くのがみえた。

馬将軍は戦慄を奏でながら、窓をもっと開けるように少女にうながす。そうすると、月明かりの窓辺に、華奢な影がそっとあらわれた。魅惑的だが清らかな眼差しで、あたりが光の霧につつまれるようにみえた。

お互いに目線を感じられるほどに近づいた時に、遥か昔と遥か未来がこの一瞬に凝縮されたような感覚が走った。

そして何故だか、相手も同じように、何か、を感じていることが分かった。

 

馬将軍は、「私ときてくれるか?」と少女にきいた。少女がうなづくと馬将軍は窓辺から少女を抱き抱えた。愛馬にまたがると月明かりに照らされた里を自陣まで駆け抜けた。

二人は高揚と不思議な安堵を共有していることを感じた。